◎脳組織のバイオメカニクスに関する研究



【研究の背景と目的】

神経は脳の中で様々な情報を処理する高度なネットワークを構築するとともに,脳の命令を身体の各部位に伝える重要な役割を担っています.神経の損傷は神経線維に作用する物理的なひずみと深い関わりのあることは容易に予想されますが,組織レベルで得られた傷害閾値を神経の損傷を判定する閾値として,そのまま適用することはできるのでしょうか?ここでは,脳組織に静的な引張ひずみを負荷し,神経線維と周囲の組織の変形を比較することによって,それらの対応を明らかにするための基礎的な実験を行いました(図1).



図1.脳組織引張試験装置(Tamura et al,Journal of Biomechanical Science and Engineering, 2007)

【研究内容】

新鮮なブタ脳から10 mm角程度の大きさに試料を切り出し,20 mm×20 mm×10 mmブロックの寒天に包埋します.神経線維を可視化するため,線維に含まれるニューロフィラメントを免疫染色し,落斜型蛍光顕微鏡下で観察しながら最大4 mmまでの静的な引張変位を与えます(図2左).このときの線維伸び比を計測するとともに,組織内の核をHoechst 33342で染色して撮影します(図2右).そして,変形前後の核の位置を参照して構成された三角形の各辺の長さの変化から脳組織のひずみを算出しました(図3).神経線維に加わるひずみは線維の配向角度と密接に関連しており,脳組織全体に加えられたひずみの約25%程度ということを明らかにしました.



図2.引張試験装置に取り付けた脳組織試料(左)と組織内の核の画像(右,緑色)




図3.脳組変形時のひずみの計測(Tamura et al,Stapp Car Crash Journal, 2007)




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Biomechanics Laboratory
Nagoya Institute of Technology